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1.はじめに
原子力安全・保安院では、自家用電気工作物が起因となる感電、火災等の事故から従業員、点検作業者、一般公衆等を守り、電力の供給に影響を与えないための保安体制の確保、公共の安全確保、保安レベルの向上を図ることを目的として電気事業法第107条に基づき自家用電気工作物設置者に対する立入検査を実施しており、保安体制の核となる保安規程の遵守状況、技術基準の適合状況及び電気主任技術者を中心とした保安活動が円滑に執り行われているかを確認しております。
規制緩和の昨今、設置者の自己責任による自主保安体制の確立が以前にも増して重要になってきております。立入検査を通じて自家用電気工作物設置者及び電気主任技術者に自主保安について再認識して頂き、自主保安のレベルが向上するよう指導を行っております。
電力安全課では平成21年度は53件の自家用電気工作物の設置者に対する立入検査を実施しました。立入検査を実施した事業場は、社会的影響の大きい事業場、保安の実態把握が必要な事業場、電気事故を発生した事業場、及び保安の管理が適切でない恐れのある事業場を中心に選定しています。
以下に立入検査の実施結果をまとめました。皆様方の事業場の保安体制を確立する上でのご参考にして頂きましたら幸いです。
2.立入検査の目的と内容
(1)立入検査の目的
立入検査事業場において、一般公衆及び従業員の安全確保や波及事故防止の観点から、自家用電気工作物設置者が自己責任意識に基づく自主保安体制をどのように構築しているか、その保安レベルの維持、向上に対する意識を確認し、必要な行政指導・助言等を行うことにより、各事業場がより望ましい自主保安体制への確立を促すことを目的としており、具体的には
@電気工作物の工事、維持及び運用の保安を確保するために設置者が作成した保安規程の遵守状況の確認
A保安状況の監督を司る電気主任技術者の保安活動が適正かつ円滑に執り行われているかの確認
B保安上必要な情報提供をすることにより、設置者の自主保安活動を充実させる
となります。
また、電気事故を発生させた事業場については、その後の事故再発防止対策を適切に実施しているか、その内容を従業員に対してどのように保安教育を行っているかを確認しています。
更に、立入検査の結果をこのような誌面を通じて他の自家用電気工作物設置者及び電気主任技術者に対し広く周知することにより、同様の電気事故の発生・再発並びに技術基準適合違反を防止することを目的としています。
(2)立入検査の内容
検査の内容としては以下の項目について、工場又は営業所、事務所、その他の事業場に立ち入り、電気工作物、帳簿、書類等を検査します。
・保安規程遵守状況及び電気主任技術者の執務状況(組織、保守、運用、保安教育、災害対策等)
・電気工作物の施設状況、維持管理状況(技術基準適合状況等)
・電気事業法関係法令に基づく諸手続状況
(3)立入検査事業場の選定基準
検査を実施する事業場は、原則として、以下の基準に該当する事業場又はその自家用電気工作物を管理する事業場等に立ち入ることにしています。
・事故報告対象事故が発生した事業場(事故内容を勘案)
・技術基準に適合するよう命じられた事業場
・経年劣化の恐れのある設備を持つ事業場
・使用実績がない又は少ない新技術を導入した事業場
・社会的影響の大きい事業場(公共施設等)
・保安の管理が適切でない恐れのある事業場
・保安の実態把握が必要な事業場
3.平成21年度の立入検査事業場の概要
平成21年度は53箇所の事業場に立入検査を実施しました。選定基準別の内訳は、感電死傷事故発生事業場が9箇所、波及事故発生事業場が14箇所、社会的に影響を及ぼした事故発生事業場が1箇所、社会的影響の大きい事業場が23箇所、保安の実態把握が必要な事業場が5箇所、保安の管理が適切でない恐れのある事業場が2箇所となっています。
なお、上記件数の合計は54箇所ですが、社会的に影響を及ぼした事故発生事業場でかつ感電死傷事故発生事業場が1箇所あるため検査実施事業場数に比べ1箇所多くなっています。

【立入検査事業場選定基準】
電圧別の内訳は、高圧が36箇所、特別高圧が17箇所です。保安形態別の内訳は、選任主任技術者が25箇所、兼任主任技術者が1箇所、電気管理技術者(外部委託)が15箇所、電気保安法人(外部委託)が12箇所となっています。

【立入検査事業場規模別及び保安形態別内訳】
事業場の業態別内訳は、工場が7箇所、商業施設・店舗が10箇所、事務所ビルが2箇所、公共施設が30箇所、その他が4箇所となっています。

【立入検査事業場業態別内訳】
4.検査の結果
(1)電気主任技術者の執務状況及び保安規程遵守状況
改善指導件数は合計48件(文書で確認したもの)で、改善を指導した具体的な内容は以下のとおりです。
@電気主任技術者の状況
・電気主任技術者が保安監督の職務を誠実に実施していない 2件(外部委託2)
・電気主任技術者が退職して、選任要件を満たした者が不在 1件(選任1)
・電気主任技術者の執務形態が不明確 1件(外部委託1)
A保安規程等の変更手続
・現状の保安組織、設備、運用を反映していない 5件(選任1、兼任1、外部委託3)
・構内図が実態と合致していない 1件(選任1)
・巡視点検測定及び手入基準が一部実態に合致していない 1件(選任1)
・保安規程を紛失 3件(外部委託3)
B保守点検
・点検の全部又は一部を実施していない(停電点検その他) 5件(選任2、外部委託3)
・点検の全部又は一部を実施していない(予備発電装置に係る点検) 2件(外部委託2)
・工事中の巡視点検を行っていない 1件(外部委託1)
・低圧回路の絶縁抵抗測定を行っていない 1件(選任1)
・点検頻度を遵守していない 4件(選任1、兼任1、外部委託2)
・巡視、点検記録が不適切(記載漏れ、記録の欠損、未設置設備に点検記録) 3件(選任2、外部委託1)
・点検結果を設置者が確認していない 1件(外部委託1)
C保安教育
・保安教育を適切かつ計画的に実施していない 6件(選任3、外部委託3)
D運転または操作
・運転操作基準を定めていない 1件(外部委託1)
E災害時の防災体制
・電気事故等が発生した時の周知方法等について検討すること 1件(選任1)
・災害時(電気事故)の防災体制が整備されていない 1件(外部委託1)
F整備その他
・ばい煙発生施設に係る「氏名等変更届出書」を届け出ていない(代表者の変更) 6件(選任6)
・ばい煙発生施設に係る「氏名等変更届出書」を届け出ていない(社名の変更) 1件(選任1)
・現有設備を反映した単線結線図が整備されていない 1件(外部委託1)
(2)電気設備の維持管理状況
受電設備関係(構内配電線を含む)及び負荷設備関係の技術基準抵触件数は14件、技術基準には定められていないが指導した件数は12件でした。改善を指導した状況の具体例は以下のとおりです。
@技術基準に抵触したもの
(受電設備)
・接地抵抗値が過大
・受電用遮断器の遮断容量が不足
・電柱の足場金具等が1.8m未満に設置されている
(負荷設備)
・電路の絶縁抵抗値が基準を満足しない
・接地抵抗値が過大
・機械器具の外箱の接地が不完全
・地絡遮断装置が未設置
・機械器具の接続部に張力がかかっているものがある
A技術基準には抵触していないが危険なため指導したもの
(受電設備)
・キュービクル内の蛍光灯が点灯しない
・キュービクル内の照明器具が破損
・キュービクル内に小動物侵入穴がある
・キュービクルが一部腐食しており、小動物の侵入の可能性がある
・引込み管に危険表示がない
・継電器特性試験の判定基準が不明確
・必要な計測装置を計画的に維持、管理すること
(負荷設備)
・分電盤の扉の補修が必要
・フィーダの行き先表示がない
・証明用電気計器(子メータ)が有効期間を超過
B文書での指摘は行っていないが、特に注意したもの
・絶縁抵抗値の経年劣化を把握し、同様の事故の再発防止に努めること(事故発生事業場において)
・点検時の記録について、管理値が不明確な記載なので、明確に記録して管理すること
・洗濯機の接地線処理が不適切である
(3)指摘事項のまとめ
電気主任技術者の執務状況、保安規程遵守状況については合計48件、技術基準適合状況については合計26件の指摘を行いました。
今回立入検査を実施した各事業場の指摘件数を円グラフにまとめました。保安体制については、指摘を受けなかった事業場(指摘件数0件)が31箇所あった一方、5件以上指摘された事業場が2箇所ありました。

【
技術基準に関する指摘事項】
技術基準の指摘については、指摘を受けなかった事業場(指摘件数0件)が39箇所、5件以上指摘された事業場はありませんでした。

【保安体制に関する指摘事項】
保安体制及び技術基準ともに指摘を受けなかった事業場は、26箇所、1件の指摘を受けた事業場は9箇所、2件の指摘は6箇所、3件の指摘は5箇所でした。
また、保安体制に関する指摘は前年度1.1件に対して0.9件、技術基準に関する指摘は前年度0.8件に対して0.5件となり、両指摘とも前年度を下回っています。
今回の立入検査対象事業場のうち、社会的に影響の大きい事業場と事故発生事業場の割合がそれぞれ約42%、約44%と多かったことが主な原因と考えられます。前者のうち公的機関では特に社会的必要性から比較的保安に対する意識の高い事業場が多い印象を受けました。後者は事故再発防止対策として実施された保安管理体制の見直しや設備改善が指摘件数の減少という形で現れたものと考えられます。
これら事故発生事業場を含む検査対象事業場で少なからず認められた課題に、自家用電気工作物設置者における電気工作物の保安に関する制度や責任・義務といった基本的な事項についての認識・理解が不十分であった点が挙げられます。各設置者におかれましては、自己責任に基づく電気工作物の工事、維持及び運用に係る自主保安体制が適切か今一度確認をお願いしたいと思います。
また、一部の保安業務担当者等においては電気主任技術者としての活動が不十分である等、執務状況に問題が散見されるケースが認められました。各保安業務担当者等におかれましては、単に設備の点検業務を履行するだけではなく、電気主任技術者として電気工作物の工事、維持及び運用に係る監督業務が適切に履行できているか再確認いただきたいと思います。
5.まとめ
以上のように、平成21年度は53箇所の自家用電気工作物に立入検査を実施し、電気主任技術者の執務状況、保安規程遵守状況については48件、技術基準については26件の指摘を行いました。
また、近年、技術及び品質向上により電気設備自体の信頼性は向上してきましたが、経営コストの削減により、計画的な設備更新がなされていない事業場が少なからず確認されました。保安管理体制に不備があった事業場、法令遵守違反のあった事業場も散見されました。
これら保安活動上の問題点を放置すれば電気事故につながる可能性が高いと思われます。
経済指標のいくつかは経済状況の改善を示していますが、依然自律性に乏しく経営を取り巻く環境は引き続き種々のリスクに留意すべき状況にあるとは存じます。しかし各自家用電気工作物設置者におかれましては、事故・トラブルこそがリスクであるとご理解いただき、保安体制及び電気設備について、法令遵守(保安規程遵守)及び事故防止の観点から今一度見直して頂きたいと思います。
事業者におかれましては、本結果を参考に電気保安について改めて認識して頂き、電気主任技術者との意思疎通を行い、しっかりした補修・改善計画をたて実行するとともに、保安体制を強化、改善し、継続的に自主保安レベルの向上に努めて頂きたいと切に願う次第です。
最後に、電気の保安は皆様方の心がけ一つ一つの積み重ねで成り立っています。改めて電気の大切さ、電気事故の怖さを認識していただき、電気事業法及び電気保安行政へのご理解ご協力を賜りますよう、よろしくお願いいたします。
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